だしでおいしく!自然の味わいを楽しもう

日本の料理に欠かせない〝だし〟。自然の香りやうまみを大切にした「天然だし」には風味調味料にはない特別な魅力があります。いつもの料理をおいしくする、だしの基本を紹介します。

難しそうなだしのとり方も基本を押さえれば、意外と簡単!

 日本の料理に、古くからなじみが深い〝だし〟。近頃は、フレンチやイタリアンなどの西洋料理にも隠し味として使用されることがあるなど、海外でも、日本のだし文化への理解が少しずつ高まってきています。
 一方で、顆粒・粉末タイプなどの登場により、手軽にだしを使うことができるようになったため、かつおや昆布などの素材からだしをとらないご家庭も多いのではないでしょうか。一見、難しいと思われがちな〝だしとり〟ですが、じつは、だしをとることは意外と簡単。そこで今回は、おいしいだしのとり方と、その活用方法を紹介します。
 うまみを大切にすることで、塩分やカロリーをコントロールできるだしは、発達段階にある子どもの味覚を健全に育てるためにも有効です。また、不足しがちなミネラルやビタミンを補えるというメリットも。天然のだしの味わいを、幼児期から積極的に味わわせてあげたいものですね。

知りたい!だしの魅力とは?

組み合わせで、うまみがアップ!

 だしとは、食材を水に浸けたり煮出したりすることによってとる汁の総称。素材からうまみ成分や香りなどが引き出され、料理に奥深い味わいをもたらします。
 昆布や野菜などの植物性の食材には「グルタミン酸」、かつお節や煮干しなどの動物性の食材には「イノシン酸」、干ししいたけなどのきのこ類には「グアニル酸」といううまみ成分が含まれます。
 うまみ成分には、組み合わせることでうまみが数倍に感じられる現象(相乗効果)が働くことが知られており、「昆布(グルタミン酸)とかつお節(イノシン酸)」や「昆布(グルタミン酸)と干ししいたけ(グアニル酸)」の合わせだしなどがよく使われます。いろいろな素材でとっただしを混ぜ合わせて飲み比べてみると、その違いを感じられますよ。

■グルタミン酸
植物性食材(昆布・野菜など)

■イノシン酸
動物性食材(かつお節や煮干しなど)

■グアニル酸
きのこ類(干ししいたけなど)

調味料と合わせておいしい料理に

 だしにおいしさを加えてくれるのが、塩やしょう油、砂糖などの調味料。だしの味わいを生かせば、薄味でもおいしくいただけます。
 また、アクの強い野菜は、だしを使うと、ただゆでるだけよりも、苦みなどを感じにくくなって食べやすくなります。子どもの料理に、積極的に取り入れてあげたいですね。

料理への上手な取り入れ方

 うまみの相乗効果は、食材の組み合わせでも働きます。例えば、野菜と魚や肉の料理のような、グルタミン酸とイノシン酸の組み合わせです。そのため、だしを使う時には、野菜料理であればかつお節や煮干しなどのイノシン酸のだし、肉・魚料理であれば野菜や昆布のグルタミン酸のだしを加えると、うまみの相乗効果が働いておいしさがアップします。

基本のだしのとり方

だしのとり方の基本を押さえれば、家庭でもおいしいだしをとることができます。代表的なだしのとり方と、相性のよい料理をマスターしましょう。

▶昆布だし
おひたしや煮物、だし巻き卵など、素材の味や香りを生かした料理におすすめ。肉や魚を使った煮物や汁物などとも相性のよいだしです。

<材料>
乾燥昆布10~30g
水1000ml

① 絞った濡れぶきんで昆布の表面を軽くふき、だしが出やすいように、キッチンバサミなどで切り込みを入れておきます。
② 鍋に水と昆布を入れて、20分~1時間程度ひたしておきます。
③ 中火にかけ、鍋の内側にふつふつと小さな泡がついてきたら火を止め、昆布を取り出します。
※沸騰させると、粘り気と雑味が出てくるので、沸騰直前に火を止めるのがポイント

▶かつおだし

麺類のつゆ・すまし汁、煮びたしや茶わん蒸しなど、だしが主役となる料理におすすめです。動物性のだしなので、野菜との組み合わせにも相性が◎。

<材料>
かつお削り節30g
水1000ml

① 鍋に水を入れて火にかけ、沸騰させます。
② 沸騰したら火を止め、かつお節を入れて、かつお節が鍋底に沈むまで1~2分おいておきます。
※混ぜるとえぐみが出るので、何もせずに待ちましょう
③ ふきん等を敷いたざるで、静かにこします。

▶煮干しだし

魚らしい味と香りが特徴です。濃いめの味付けに合うので、味噌汁やうどん、ラーメンなどの麺類のつゆにおすすめ。

<材料>
かたくちいわしの煮干し25~30g
水1000ml

① 苦みと臭みを防ぐため、煮干しの頭と腹の部分を割って取り除きます。
② 鍋に水を入れて、煮干しを30分以上ひたします。
③ 煮干しがふやけてきたら、鍋を火にかけます。
④ 沸騰直前で弱火にして、アクを取り除きながら、そのまま5分程度煮出します。
⑤ ふきん等を敷いたざるでこすか、網で煮干しをすくい出します。

子どもと一緒に! 「だしの味比べ」をしてみよう

 昆布、かつお節、煮干しのだしをとって、子どもと一緒に「だしの味比べ」をしてみましょう。まずはそのまま飲んでみて、素材ごとの味の違いを確かめたら、異なるだしを混ぜ合わせたり、調味料を加えたりして、味の変化を楽しみます。
 食は、健康に生きるための基本。遊び感覚で食の奥深さに触れられる、よい機会になりますよ。

だし素材を触ってみよう

昆布、かつお節、煮干しなどのだし素材に触ってみましょう。においをかいでみたり、そのまま食べてみたりしてもよいですね。

素材ごとのだしの違いを確かめよう

素材ごとにだしをとり、それぞれの味の違いを確かめて、「甘い」「苦い」などの感想を言い合ってみましょう。異なる素材のだしを混ぜ合わせると、どんな味になるか、実験してみてもよいですね。

調味料を入れてみよう

だしに、しょう油、塩、味噌などの調味料を入れてみましょう。ほんのちょっとの調味料でも、ぐんとおいしく! お湯に調味料を入れただけのものと飲み比べてみると、だしの役割の大きさをより感じられますよ。

水だしなら、もっと手軽

だしをとるのに手間いらずで便利なのは水だしです。昆布、煮干し、かつお節などの材料を麦茶用のガラス容器などに入れて水につけて、冷蔵庫で一晩(6時間以上)置いておけばでき上がり。保存の目安は、冷蔵庫で3~5日程度。長く保存したい場合には製氷皿に入れて冷凍保存をするのがおすすめです。

☆月刊誌『灯台』2020年9月号「ヤング・ミセス・プラザ」より転載