子どもの自信とやりきる力を育む 待つ子育て・見守る子育て

親がよかれと思ってしていることが、かえって子どもの自立を妨げている場合があります。子どもの力を伸ばしていくための待つ子育て・見守る子育てのヒントを紹介します。

子どもが自力でものごとをやりとげたり
問題を乗り越えるのを手助けしよう

〝何事にも自信を持って、たくましく前向きに生きていってほしい……〟
 親ならば誰もが願うことですよね。でも、親がよかれと思って、先回りしたり、口出しをしていることが、かえって子どもの自立を妨げ、やる気をそいでしまう結果につながることがあります。
 子どもにとって、自分の力で何かに取り組んだり、問題を乗り越えたりすることは、成長の大きなチャンスになります。子どもなりに知恵を絞って何かに取り組んでいくなかで、“自分はできる!”という自信を深め、他者との関わり方や気持ちの折り合いのつけ方などを学んでいきます。親の過度な干渉は、せっかくの機会を奪ってしまうことになりかねません。
 大切なのは、子ども自身が自分でものごとをやりとげたり、乗り越えるのを手助けすることです。それによって、良好な親子関係が自然とできあがっていき、子育てもラクになってくることでしょう。親として心がけたい、待つ子育て・見守る子育てのためのヒントを紹介します。

行動をチェック! 過保護、過干渉になっていませんか?

子どもの自信を育むためには、身近にいるママやパパの存在が重要です。でも、何気なく発している言葉が、逆効果になってしまっていることも……。まずは、こんな言動が習慣化されていないか、普段の関わり方を振り返ってみましょう。

▶「ダメ!」「やめなさい!」「どうせ、できないでしょ」など子どもの行動を制限したり、叱ってばかりいる

「時間がないから」「危険だから」「周りに迷惑をかけないように」などの理由で、一日に何度も禁止の言葉を口にしていませんか? 過度な禁止や制限は、子どもが自分自身で考えたり、時に失敗したりして、そこから何かを学んだりする貴重な機会を奪ってしまいます。また、否定されることが増えると、〝自分はダメなんだ〟と思い込んでしまったり、気持ちが安定しなかったりするため、親を困らせる行動が増えることにもつながります。

アドバイス!
ついつい禁止や否定の言葉を言いたくなったら、〝この言葉は、本当に必要な言葉かな〟と立ち止まって考えるクセをつけてみましょう。否定の言葉を減らしていくと、子どもの心が安定し、いざという時に、本当に伝えなくてはいけない〝No〟の言葉も伝わりやすくなりますよ。

▶「○○ちゃんはできるのに……」など子どもを他の子と比べてしまう

わが子を他の子と比べていませんか? 子どもにしてみると、相手に比べて自分は劣っていると感じてしまうことに。これでは、子どもの自主性は育たないどころか、劣等感を覚えてしまい、新しいものごとに挑戦しようという意欲は生まれにくくなります。

アドバイス!
その子自身の成長にフォーカス。昨日よりも、今日のわが子が成長していたら認めてあげることを意識してみましょう。

「こっちのほうがいいわよ」など子どもの意思と無関係にものごとを決めてしまう

親が決めてばかりいると、受け身の姿勢が身についてしまいます。人の顔色ばかりをうかがって、大切なことを自分で決めることができない大人に育ってしまうかもしれません。

アドバイス!
自分でものごとを決める機会が多いと、自分が尊重されている感覚を持てるので、必然的に自信が持てるようになります。子どもが話しやすい雰囲気をつくり、できるだけ子どもの気持ちや考えに耳を傾けてあげましょう。

安心して見守るために今すぐできる子育ての工夫

子どもにとって、自分でできることが増えるのはうれしくてたまらないこと。何度も失敗し、試行錯誤を繰り返しながら、少しずつできることが増えていきます。環境面などの工夫をしながら成長をサポートしてあげるとよいでしょう。

「自分でできる」環境づくりを工夫する

食事、衣服の着脱、遊び、片づけなど、やりたいこと、興味を持つことはできるだけチャレンジさせてあげましょう! 上手にできなくても、ママやパパは笑顔で見守ってあげてください。やりたい気持ちがあるのにつまずいている時には、どうしたらできるようになるかを考えて、子どもが自力でできるような工夫をしてあげるとよいですね。

<例>

子どものものは子どもの手が届く位置に

踏み台を置く

衣服や持ち物は、子どもが自分で扱いやすいものを

「自分で決める」機会を増やす

自分で決めることは、考える力につながります。こうしたらうまくできた、うまくできなかったなどと、自分で選んだ行動の結果も体験し、次は、「どうすればよいのだろう」と考えるようになるからです。子どもも、自分で選んだものであれば、積極的に取り組む姿勢を見せるでしょう。子どもだけでは決めることができない場合には、「これと、これとならどっちがいい?」などと選択肢を提示して選ばせることで、だんだんと自分で決める力が身についていきます。

「できた!」という喜びに共感する

自分の力で何かができたという喜びの瞬間を見逃さずに、できたことの喜びに共感してあげましょう。過度にほめる必要はありません。「よかったね」「うれしいね」「がんばっていたもんね」など、その子の気持ちに寄り添い、がんばりを認める言葉がけをしてあげるとよいでしょう。

子どものペースを尊重できるよう、時間に余裕を持って行動する

できるだけ時間に余裕を持つようにしておくと、子どもの動作を待つ心の余裕が生まれやすくなります。どうしても待てない時には、「今日は急いでいるから、また今度ね」などと約束し、必ずその約束を守るようにしましょう。

「ここでならいいよ」等のルールをつくる

状況によっては、すべてを許すわけにはいきません。例えば、パワーがありあまっている子どもの場合なら、「ここでならいいよ」「この時間ならいいよ」と思い切り発散させる時間をつくるなどの工夫をしてみましょう。子どもと話し合ってルールを決められると、よりよいですね。

早生まれの子の自信は育まれにくい?

 早生まれは、同じ学年のなかでも誕生日が遅くなるため、月齢が高い子よりも成長が遅いことを気にするママやパパもいるかもしれません。でも幼児は、大人が意識させなければ、「できる」「できない」を、周りと比べて落ち込むことはあまりありません。遊びやお手伝いなど、その時にできることに集中して、無理なくその子の力を伸ばしてあげましょう。
 自信をなくしている場合には、難易度が低いことからできることを増やして、少しずつ自信を積み重ねてあげる関わりを意識していくとよいでしょう。他の子と成長を比較せず、たくさんの経験を楽しみながら積ませてあげることが大切です。
 

☆月刊誌『灯台』2020年7月号「ヤング・ミセス・プラザ」より転載